気を取り直し、窯跡へ行く為に山道へと入って行く。ここからは中国人の男ガイドの引率である。今までのお茶工場とかはバスガイドである女のガイドの人ね。
先ほど見たものとは違ってのどかな風景である。果物がなっており、牛がいた。んもんも鳴いている。民家を通り越し、しばらく行ったところで一行は止まった。ここが目的地の汀渓窯か?だが、見渡しても何も無い。あるのは前のほうで水没している道と、のどかな山林である。周りの皆も不思議に思ったらしくざわめきだした。
「まさか道を間違えたんじゃないだろうな・・・。」と中国人の男ガイドのほうを見る私。年齢は30から40。そのガイド、なにやら落ち着きなさそうにきょろきょろしている。すると突然、山林の中に突進し始めた。オイ!?藪の中に導かれるように入って行くガイド。まさか残暑の熱気で頭がやられてはいまいか・・・と一人余計な心配していると、いきなり藪の中へ来いと手招きをはじめた。冗談ではないと思ったが、そこは引率される身の悲しさ、行く以外には無い。藪の中に入った私。よく判らない石碑(皆写真を撮っていた。多分重要)の横を通り抜けて林の中を更に進む。と、石の積み重ねてあるところで急に止まった。
今度はなんじゃい…?もしかして、 窯跡が近いのかしらー!?
ドキドキ。
すると数十秒のガイドとの相談の末、K先生が説明をはじめた。
「窯跡は現在水没してダムの底だそうです。」
エエエエエエ(´Д`)エエエエエエエ
「乾季になれば、水不足で泥まみれの窯跡がもしかして見られるかも知れません。」
エエエエエエ(´Д`)エエエエエエエ
すいません・・・そんなに待てません・・・。
なんたることでしょうか。わざわざ泥道をバスに乗り30分も進み、冷や汗をかいてここまできた苦労は一体。ひとえに窯跡を見たいという学問的探究心の一念であったはず。
皆の顔に落胆の色が浮かぶ。(個人としては植物とか石を積み重ねたものとかスケッチできたので良かった。)ガイドの人も落胆の様子がわかったみたいで、面目なさそうな顔をしている。・・・ん?て言うか普通は下調べして分かってるんじゃないのか…。あれ?
「!!」いま、明かされる驚愕の事実!男ガイドは下調べも何も無し!こらガイド!
そんな折、誰かが、石の積み重ねてある前で埋まっている壷を発見した。その時である。落胆していた男ガイドがいきなり飛んできて其の壷を一心不乱に掘り始めた。其の様子には鬼気迫るものがあり、なかなか声をかけることが出来ない。先生方(発掘の助手の人だったか?)が声をかける。
「あの石の積み重ねてあるのお墓だから、それは多分骨壷だよ。やめたほうがいい。」
だが、ガイドの人は「もうちょっと・・・もうちょっと・・・」と言いながらやめようとはしない。何がもうちょっとなのか、私にはサッパリ分かりません。顔には不気味な笑みが浮かんでおり、まるで目の前の墓の主に取り憑かれているかのようにひたすらほっている。
そうか・・・わかったぞ!「もうちょっと」と言うのは、「もうちょっとで復活できる」と言う意味だな!?
いいや、そうだ!絶対そうだ!そうに違いない!
よくよく考えてみると、あの林のほうにふらふらと入っていったあたりから彼には何かが取り憑いていたのではないか。
もう壷は三分の一以上露出している。幽霊の復活は近いやもしれぬ。いや、中国だからキョンシーか。だが間一髪、
「やめろ!」
「やめてくれー!」
「オネガイ、オネガ―イ!」(大意は合ってるが、だいぶ脚色してあります。本当は叫んでなどおりません。)
まわりの人の制止によって彼に取り憑いた霊は去り、どうにか事なきを得たのであった。
たとえ失敗の穴埋めでも、墓暴きはしちゃいけないと思います。
さて、其の後、男ガイドが気を取り直し、
「ダム見に行きましょう。」
と、窯跡が水没している原因であるダムへと何故か向かった。ほんとに何でだ?目的地が水没している以上、早く立ち去った方がいいのに。何か遺跡でもあるんでしょうか。
「ここを渡ってください。」
ひょええええええ・・・。
ダムの水門の目の前にある道をわたっていく。そのダムの高さたるや優に50mはある。こわいよー。しかも道の幅は一mも無い。渡る道の横には水を排出する門がポッカリと大きな口をあけており、こちらをたまらなく不安にさせる。
「水が出てきたら、間違いなく、死ぬ…。」
そんな懸念を人にいだかせる。一応柵が着いているのだが、高さが30cmしかなく、精神的支えにしようとしても役に立たない。まったく、ああいう柵は何のために付いているのか。怖さが倍増するだけです。それでもその柵を頼りに進む。そして苦労して渡りきったところ。
ピピピ・・・チュンチュンチュン。鳥のさえずる声がし、ジリジリと残暑の日差しがコンクリートに反射し、皆をこんがりと焼く。そして目の前に広がる巨大なダム湖。
ただただクソ暑い中、のどかな風景が広がるのみ。先続く道は山の藪の中に続いているようだ。他にはなんも無し。
皆が渡り切ったとこでガイドは言った。
「どうです。きれいでしょう!」
しらああああああああああああああああああああああ・・・。
激烈に重苦しいシラケムードが全体に漂う。「そんだけかよ!」と、ツッコむ気すら怒らない。
アハハハハ!なんかオラ、つまんな過ぎて、逆に楽しくなってきたぞ!!
この旅行は一応研究旅行。
「このダムのあの細くて怖い道を渡った事は、果たして学問上意味があったのだろうか?」
そう考えたのは私だけではないはずだ。
周りの女学生が疲れ切った棒読みの声で
「いい、けしきだね。」と、ぼやく。それにガイドはすかさず、
「このダムはここら辺で一番大きい。日本でも中々ないでしょう。」ダム&お国自慢。
女学生「ふーん(棒読み)」
分かる・・・そんな返事確かにしたくなる・・・。
ガイドめ、先程の憑依現象に飽き足らず、窯跡がなかったのの穴埋めに、でかいダム自慢してお茶を濁そうとしたに違いない。
下調べも何も無し!穴埋めに意味も無い、でかいダム自慢!こまりました。ガイドさんがちゃんとガイドしてる様に見えません。
このひとはほんとうにガイドさんなのでしょうか・・・?続く。