その五 ホテルへ

◆◆中国旅行◆◆

◆一日目 其の八 「ホテルへ」

いよいよ1日目も終わりに近づき、ホテルへと向う時がやってきた。

「黒超女郎」
  「生血強身」
  「奇妙病院」

(゜д゜)
怪奇物か、吸血鬼か。すんごく怪しい看板が立ち並ぶ道。我々は一体どこへ連れて行かれるんだ。少なくとも、現世であってほしい。そんな切実な願いを抱えつつバスは目的地へと走っていく。そのうちに、だんだん明かりも少なくなっていく。どうやら裏路地っぽいとこを走っているようだ。心細い。

すると、そのうちに柔らかな光が見えてきた。それは幻想的な雰囲気を出す明かりに照らされ、大人びた雰囲気を出しており、その中へ入って行くと先ほどとはうって変わったようなやさしい光に包まれたでかいホテル。前にはこれまたでかい噴水があり、奥の方には大統領など、超絶VIPが泊まると説明された建物まである。道理で、でかいだけでなく、なんとなく品位がある。先ほどの看板とのギャップがすごい。もしかして何時の間にか事故って天国に…?

到底私に似つかわしくないこの建築物群こそ、今夜我々が泊まる五つ星ホテルである。中へ案内されるとそこには大きなシャンデリアがあり、まばゆい光を放っている。部屋の鍵を貰った我等は、吹き抜けの庭がある地下におりていき、カード式の鍵を開け、VIP気分で部屋に入った。あれ?内装は普通のホテルだ。でもいいホテル。冷房も効いて快適。ストレス無くすごす事が出来る。

夕食は、ホテルではなく、別のところでとるらしい。ただ安く済ますためだろうが、ひょっとしてこの旅を企画した旅行会社も、ここで我々が泊まるだけならまだしも、食事を取る事は場違いだと感じていたのであろうか?バスに乗り、夕食の為、アモイの町へとむかう。アモイはビル群が立ち並び、道路は広く、なかなかの町である。トンネルをくぐり、しばらく行くと店に着いた。

◆◆中国旅行◆◆

◆一日目 其の九 「本場の中国料理」

夕食をとる店に着くと、なにやら匂いがしている。私には何の匂いか形容しにくかったのだが、ND君曰く「八丁味噌の匂いがする」そうだ。食べるとこは3階か4階(失念す)。エレベーターがあるにもかかわらず数人の者とはしゃいで一緒に階段を駆け上がる。そして円卓に着き食べ始めたのだが、皆、中国に着いてから最初に食べるとあって、おたがい打ち解けておらず、会話も余り無く、箸が進んでない。皆、手元のビールばかり飲んでいる。こちらのビールはかなり薄く、水みたいだ。たしかチンタオビール。そろって一同、飲めない者を除いて、がぶがぶ飲んでいる。皆ビールを飲みすぎである。水を取った方が、これからの異国での一週間のことを考えると、いいんじゃないか?と思ったが、それに反して私も何故かビールを飲む。

理由は明快。水が出てこないから、これを飲むしかないのであった。
ヨーロッパの方に行くとビールより水が高いとか言うから多分そんなとこだろう。9月なので熱くてのどが渇いているためどんどんビールが減っていく。しかし、円卓で食事を同じ物をつつくということに遠慮があるのか、食事は余り減っていかない。なので、これはチャンスと私は一人、勝手に円卓をまわし食事を食べていた。私がこんなに回していていいのだろうか・・・?ともふと思ったが、私より派手に、ND君がぐるぐる回しがつがつ食べていたので、余りこちらは目立たなくなり、気兼ねなく食べられたのでよかった。「一番よりNo.2!」とあるマンガの格言を思い出しつつ食べる。ND君ありがとう。おっかなびっくり食べていた皆ではあったが、最後には結構食べて料理はなくなっていた。だが、こののち、同じような料理が四日間、連日連夜、昼夜と無く続き、飽きた挙句に体調を崩すことは誰が予想したであろうか。

◆◆中国旅行◆◆

◆一日目 其の十 「水」

食事の後、ホテルに帰り、集団で水を買いに行く。水道水がそのまんま飲めるのは、日本だけのようだ。中国の水道水は汚くて飲めないそうである。だが、中国の飲料水事情について、出発する前に友人に聞いたところ、恐るべき答えが返ってきた。

「飲めないのは汚いのもあるけど、理由はそれだけではない。中国の、とある川の上流にヒ素の鉱脈があると言う。気をつけたまえ。そこに住んでいる住民はヒ素のお陰で皆、歯が黒い。もし歯が黒い住民を見かけたらどんなに衰弱してようとも絶対に水は飲むな・・・。

真偽は定かではないが、絶対に真水は飲むものかと固く決意したことは確かである。ということで、ミネラルウォーターを買いにいく我ら。20人くらいで駄菓子屋くらいの大きさの店に押しかけたのだが、言葉が通じない。皆で話し掛けるでも無くうろうろしていると、そこへ進みでたる勇者一人。其の名はOD。何とガイドブック片手に店の男に話し掛け始めたではないか。ほどなく水の値段を聞き出すと皆に値段を伝える。殺到するその他大勢。彼のお陰で水は買えた。ガイドブックに載っていた言葉は、しゃべってもほとんど通じず,空振りだったみたいだが、身振り手振りでどうにか伝えていた彼の姿は、何か光り輝くものがあった。私は将来彼が何かの役で大成することを信じてやまない

さて、水を買った我ら。そのあとちょっと店に寄った。私がなぜ店に寄ったかというと、この旅において、ある「裏の目的」があったからである。それは、「中国のマンガを買うこと。」マンガが趣味の私にとって、隣の国である中国でのマンガのレヴェルは果たしてどんなものであろうかということは、かなり重大な関心事であったのである。日本の雑誌で紹介される中国漫画事情みたいなものによると、中国では今、「劇画」(ゴルゴ13のさいとうたかを、カムイ伝の白土三平とかに古くは代表される1960年代以後から70年代後半、80年代に少しかかるあたりに流行った様式。)が流行っているらしい(流行っているのは劇画でも、子連れ狼とかで有名な池上遼一の絵柄をベースにしたものらしい)とかいう6年前に聞いた怪しい噂(2001年現在)は知っているのだが、それを確かめる為実際に読んでみたいのだ。で、実際店に寄ってみたのだが、マンガは無かった。五つ星ホテルにあると思ったのが間違いだったのか?(そのとおり、図星である。よくよく考えてみたら、日本でも一流ホテルに沢山マンガが売っている所は無い。そのことに旅から帰ったあと気がついた私。情けない・・・。)

ホテルに帰り、自分の部屋に着いた私は、風呂に入り、そのあと、S君が持ってきた本にかいてあった歴史学の批判についてしばし語った後、パソコンの話をしたりした。余談だがテレビの中国の番組で浜崎あゆみのことを、日本的歌姫と紹介していた。アレが中国でも大人気らしい。ふだんはまったく縁が無いのに今日はなんだか浜崎あゆみに縁のある日である。私は一人、中国での彼女の人気を目の当たりにして、アモイ大学の、「現代人をアイドルとして象徴的にあらわしているのではないか?」という仮説への確証をますます勝手に深めつつ、眠りについた。続く。

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