その四 アモイのアイドル

◆◆中国旅行◆◆

◆一日目 其の六 「君の名は」

ゴリラ顔のマネキン。

つまり人類開闢の頃の人間の模型が陳列されているのであった。左端から人類進化に沿って黎明期より順番に並んでいた。この展示方法で行くと、最後の右端にて一番進化した人類の姿をみることになるわけである。まずマネキンの全体を俯瞰してみる。どのような展示の仕方か見るためである。右端の、一番進化した事を表す人形が、ほかの人形と少し距離を置いて展示してある。これは良くも悪くも「一番進化した最後の人類(つまり今の我々である。)は、他の奴とは違う!」といった気概が見える展示であると個人的直感により考えられた。

しかし、右端の一番進化している人類をまじまじと見た所、それはヒョウ柄の毛皮の服に、ロングのゆるくウェーブがかかった金髪を身にまとっている、ただの毛の少ないゴリラであった。これはおかしい。おかしいのは何故か髪が金髪クルクルであると言うだけではない。マネキンが他と変わらぬゴリラと言うことである。それは、昔の人類と距離を置いて、現人類を讃美している展示の意図(推測)と相対立するものである。

「何故だ・・・。」
謎を解くべく、思慮をめぐらす私。そのとき誰かが叫んだ。
あゆだ!!」
おお・・・!!一瞬の沈黙の後、なんとそれに呼応するようにみんな叫びだしたではないか。
あゆだ・・・!」「あゆ・・・・・・!!」「あゆ!」
あゆとは、 この頃ヒョウ柄の服を着、髪を金髪巻き毛に染めていた アイドル、浜崎あゆみのことである。そう言われてみれば本人と奇妙なほど、格好が似ている。と、私の頭の中に電流が走った!

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◆一日目 其の六 「なぞはとけた」

以下、脳内一人芝居。
「!!」
「なんだと!?管理人、この謎めいた展示の意味がわかったと言うのか!?」
「そうだ・・・。もう少しで俺はあのゴリラ顔にだまされる所だったよ・・・。やはり、右端の人形は現在の人類をあらわしているんだ!」
「で、でも!右端の人形の顔は、あくまで原人の象徴であるゴリラ顔。ゴリラ顔が原人の象徴と言うのは左端から展示を見ていけば、わかることだと自分で言ってたじゃないですか!」
「ああ。しかし、それはあくまで通常の見方をした場合だけだ!」
「何か違う見方があると言うのか!?」
「それは・・・。アイドルだ!」
「アイドル!?」
「さっきみんなが『あゆ』『あゆ』と叫んだだろう。それで気がついたんだ。あの人形のどこを見ればいいのか!それは・・・。」
「・・・・・・(ゴクリ)」
ゆるくウェイブのかかった金髪と、ヒョウ柄の服だ!
「なっなんだってー!?」
「そう。あの人形の服と髪は、今現在(この時点では2001年)流行っているアイドル、浜崎あゆみの格好を表しているんだ!そして、いまっぽい格好をさせることで現代人を表しているんだ!」
「しかし!わざわざそんなことをしなくてもいいじゃないですか!新しい人形を買えば!」
「金が無かったんだよ・・・。よくみろ!原人はどれも同じマネキンだ!華僑はこの博物館の惨状を見落としていたんだよ!」
「!!!!!!!!」
「中国は貧富の差が激しい。同じ人形を買えば、違う人形を買うより費用対効果で安くすむ!・・・そして、第二の証拠が、全て同じマネキンにもかかわらず、右端の一体だけ顔が黒い事だ!よく考えてみろ・・・。浜崎あゆみの前には、一体何が流行っていたかを・・・。」
「あ・・・安室奈美恵!ということはガン黒ブーム!そうか・・・。この黒ずんだ顔はヤマンバメークが落としきれずに残った痕跡か!」
「そうだ!これがアモイ大学博物館原人標本の真相だ!」
「 やったぞ!謎は全て解明された!」

一人芝居終わり。

ヒョウ柄の服ただしギャートルズ風)、ゆるくウェイブがかかった金髪、意思の強き事がにじみ出る、がっしりとした風体、真っ直ぐに虚空を見上げる目。一回目が慣れると、原人には見えずに浜崎あゆみに見えてくるから不思議である。皆も、目の前の原人・・・もといアイドルに向かってカメラを向け撮りはじめた。さながら記者会見目の前のあゆは、どっしりと大物の貫禄を漂わせ、真っ直ぐにそびえたっていた。

・・・だが、ホントの事を言えば、一体何故こんな原人が陳列されていたのか。これだったら陳列しないほうが良かった。密かにアモイ大学のレヴェルを疑いつつ入口を後にした。

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◆一日目 其の七 「その他の展示。」

さて、入口から後の展示は、どうやら古い順に物が並んでいるらしく、先ほど出てきた原人から始まり、殷、周、秦、漢・・・とすすんでいく。焼き物メインである。

建物の外には、イスラム教の石版が沢山立てかけられており、イスラム人がここまで進出していることの確かな証拠をこの目で実際に見ることが出来、いい体験をした。ひとつ気がかりだったのは、書かれている(実際は彫られている)文字の色が赤と白の2種類有ったことだ。何か意味が有るのだろうが、今日まで謎のままである。

アモイ大学博物館では、いろいろな物を紙に書くことが出来たのでかなり良かった。建物内部の採光は、主に昼間行ったこともあってか、外から採っていた。空調は、ありません。入り口でおばちゃんが談笑していたのが個人的になんとなく気になった。あの人たちはいつもあそこに居るのだろうか?続く。

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