朝、いいかげん脂っこい料理に飽きがきている私にとって朝のおかゆがなんとも言えずうまい。誰!?問題は脂っこいことではないといってるのは!?!?・・・何はともあれ、中国人が朝おかゆを食べる気分がなんとなくわかった。
さて、周りを見渡すと、旅の友はこれまでの疲れで、早朝の時間にして既に目は虚ろ、姿は明日のジョーの最終回。みんな真っ白。魂が抜けかかっている。
その虚ろな目…。目は口ほどに物を言う。私は彼らの目を見た瞬間すべてを悟った。その、まるで夢想転生(by北斗の拳)を使えそうな位哀しい目から聴こえて来た言葉は・・・
タスケテ
要は「もう・・・この旅行自体お腹いっぱ・・・食傷気味です。ありがとうございました」との事なんですが、皆さん・・・この旅7泊8日という事を忘れてはいないだろうか?最終日は帰るだけなので抜くとしても、あと半分ありますよ!?!?死人が出ないことを祈る。
まあ私はそんな人を横目で見つつ朝食のおかゆを食うているわけです。昼夕と、あんなデスグルメを食らってては、朝に胃を休めるもの食べなければとてもじゃないけど持ちません。真面目なことを言わせていただくと、みんなご飯に気を使ってないこと事も虚ろな目の原因だと思います。こっちは毎食毎に体調特に悪くないにも関わらず、デスグルメを中和する為胃腸薬飲んでましたし。ちなみに「ヤバイ・・・ヤバイヨ・・・」と天啓が下ったので、今日から正露丸をプラス。
朝食の後、いつもの様にバスに乗り込んだ。出発すると、中では女性ガイドが元気よくアナウンスを始める。だが、だんだんと声のトーンが落ちてゆき、最後は一定のトーンで、まるで念仏を唱えるように静かに喋る様になった。ガイドは疲れているわけではないようだ。ちらっとガイドを見ると「仕事になんないわ」とふてくされてる。最後部に座ってる私が、ふと前の人々を見渡してみると・・・。
異常な静けさ。みんな首を折られたかの如く、およそ斜め45度に傾けたまま微動だにしない。どうも爆睡しているようだ。
ああ・・・一日目はキンキン声の為頭が痛くなった女ガイドの声が、ここへ来て鎮魂歌(レクイエム)に。・゚・(ノД`)・゚・。
私自身余り気付かないが、かなり疲労している様で、窓の外を夢うつつに眠りながら眺めていく。と、途中中国銀行についた。一同両替をしてもらう。私はここまでほとんどお金を使っていなかったので、バスを降りず両替はしなかった。帰ってきた人に「銀行どうだった?変わったとこあった?何か手続きとか」と聞く。魚のような目をしたS君から返ってきた答えは、
「・・・ああ・・・銀行だったよ。」
皆もうダメポ…
そうこうしているうちに、我等ドナドナの歌が良く似合うバスツアー一行は景徳鎮陶磁器研究所へ到着した。
陶磁器の作り方を工程をおって見せてもらう。印象的だったのが轆轤(ろくろ)で、日本のように回転台を机の上で回すのではなく、土を掘り、そこへ回転台を入れて地面に直に座って回す方法がとられていた。
その轆轤(ろくろ)で粘土をこねる所をみた後、こんどは焼窯の中に入らせてもらったりした。なんかバカでかい窯で建物の中に造られている。剥き出しの柱と窯の白い潜水艦のようなフォルムが合体している所が造形的に面白い。左の筒が煙突。
景徳鎮陶磁器研究所を一通りみた後、男ガイドが研究所の他の場所を案内した。建物の真ん中がぽっかり開いた「回」の字の形をした建物である。屋根の開いた場所の下には水が溜まっており池のようだ。
その建物の説明の際、ガイドが「天井」と言う言葉の日本語と中国語での意味の違いについて力説した。
「いいですか? 中国でいう天井は日本でいう天井とは意味が違い、文字通り「天」にあけられた「井」戸のことを指すのです。」
要するにこの建物のように屋根が真ん中だけ無く、そこから雨が降った際、水を取り入れることが出来る建物のつくりの事をさすらしい。うむむ。確かに意味としても日本語での意味より筋がとおっている。そしてガイドは日本語の間違いを正すかのように、その事を誇らしげに、実に4回も話したのだった。
やはり中国。辺境の島国である日本の文化と違うんだ!中華一番!華夷思想!といったようなプライドがあるようだ。馬鹿にした様子は無かったし、素直に誇りを語るのを聞いているのは気分がいい。中国人の、文化的真中思考(注:これはエセ中国語)の気概を肌で感じた瞬間であった。
・・・しかし、その直後。私は陶磁器研究所のお土産コーナーにおいて、陶磁器製のゆがんだ青いハローキティー、耳の無い黄色のドラえもんを発見・・・
プ、プライドォ――――ッ!?。・゚・(ノД`)・゚・。
色々と中国の人の味わい深さを知った景徳鎮の陶磁器研究所。
そこを去る際、アクシデント発生。
道ですれ違う際、すれ違った相手のバスのタイヤが溝にはまる。
相手が端に寄り過ぎたのである。「哀れよのう・・・。」と思っていると何故かバスが動かない。
どうやらこちらのバスが道を譲らず、あまり寄らなかったせいにして、向こうのバスの運転手と乗ってたババアが言いがかりをつけてきた様だ。バスでどうやって寄れと。こうなったら、こっちの運転手と向こうの運転手(プラス乗ってた婆さん)とで言い合いが中国語で始まり、激しい喧嘩となるにはそう時間はかからない。中国語はただでさえ早口。喧嘩になった際は、誇張抜きで爆竹がしゃべっているような感じだ。成り行きを見守る一行。ちなみに相手の運転手はあきらめ気味だがババアの方のファイティングスピリットがずば抜けている。ババアは爆竹というよりクラスター爆弾。言葉はサッパリ判らないが、すごい罵詈雑言飛び交っているであろう言い合いの後、なんと我等が運転手は総てを無視して出発した!
Good(*^ー゚)b
なかなかのトラブル解決方法である。後の方では、はまってしまったバスの運転手とババア(やっぱりババアの方が声が格段にでかい)が、かなきり声をあげ、何か言っている。バスの中では旅の友が「すげえな」とか「だいじょうぶかよ」とか小声でいっているのが聞こえる。まあ大丈夫でしょう。中国では車の免許を取る人が多すぎるから、免許はほとんどばら撒きに近い状態で配っているときいた。だから、これしきの強引行動はいつもの事、道路は無法地帯であり、日常茶飯事!多分当然!さすが中国は大陸なだけあり(?)、法律が個人に対しておおらか(意訳:ずさん)に出来ているので、こういった出来事も経済発展と言う黄河の悠久の流れの前に、まるで何事も無かったように飲みこまれるのだ!
「老婆よ!運転手よ!達者でな・・・。」
私はとりあえず江沢民国家主席に交通安全を祈ることにした。