2006年6月7日 通学路でドッキリ☆ソフィーの裏事情(二次創作文)

 

このごろ、ロイヤルワンダー学園付近の町中では、学園の生徒が凶行の末に現金をとられるという事件が頻繁に起きていた。

昨日もロイヤルワンダー学園二年、オーケストラ星出身のノーチェが自らのバイオリンの弦で亀甲縛りにされ、お菓子屋の軒先の看板にディスプレイされた挙句に現金 を奪われるという事件がおきたばかりである。尚、健全な諸賢諸氏並びにノーチェのプライドの為に申し上げておく。服は着ていた。

目撃者であるふしぎ星出身のプリンセス、ミルロの話によれば、犯人はノーチェの体にお菓子を女体盛のようにトッピングし、ノーチェを吊るした弦で伴 奏を弾きながら、「おかしなおかしなプリンセス」を歌ったとのこと。
その際ノーチェは気丈にも音楽の聖地オーケストラ星のプライドにかけて、「イエーイ!フォー!」とリズム良く、合いの手をはさんでいたとの事であり、その恐怖の 体験に生徒たちは怯え、学校からは下校時に気をつけて帰るよう指示が出ていた。なお、絵が得意なミルロに似顔絵を描かせてみてはどうかとの話も出たが、当のミルロに試 しに絵を描かせてみた所、
ごめんなさい…私…これしか…きゃあっ!…だめ…
等といい、顔を赤らめながら、亀甲縛りになったノーチェを岸辺露伴にも似た異様なスピードと力強い線で極めて克明に描いた。画面を見てはいなかったそうであ る。犯人について唯一ミルロが覚えていたのは、真っ黒い服を着ていた事だけだった。

日が傾き、空が赤く染まるころ、ロイヤルワンダー学園から一人の少女が飛び出した。
手になにやら巻物を持ったこの少女。ふしぎ星のおひさまの国出身のプリンセス、ファインである。プーモも一緒だ。
「ファイーン!大丈夫だった〜?」
校門の影からレインが駆け寄り、手に持ったカメラを構える。すると、ファインは巻物をスルスルッと広げ、そこに書かれた「無罪」と言う文字を高々と上げた。
「何とか誤解は解けたよ。まさか犯人の歌った歌が私の持ち歌で、そのお陰で私が犯人に疑われるなんて…。」
「それで、無罪の決め手は?」アナウンサー慣れした口調でレインが質問する。
「ええっと、それは・・・」ファインが何故か言いよどむ。と、その隙にプーモがすかさず答えた。
「僕が、『もしファイン様だったら、お菓子を珍妙に悪魔合体させて、今頃ノーチェ様が中毒死してるでプモ』、と言ったら教頭先生は黙りこくったでプモ」
プーモの手には昨年ふしぎ星で行われたスイーツ対決の際、ふたご姫が作った「お汁粉アラモード」の成分分析表が握られている。
「おひさまの国極秘資料」と言う文字と一緒に、表紙に描かれた赤いドクロや放射能マークが、その危険度を物語っている。
「ええっと…と、ともかく良かったわ。カットカット!じゃあ寮に帰りましょ。」
プーモに抗議したかったが、抗議しても痛いところを思い出すだけだと、さっと流したレインだった。
「あれ?天使たちは?」
「寝ちゃったから寮に行って置いて来たわ。」その言葉にファインはハッとした。
「レインありがと。わざわざ戻って来て、待っててくれて。」
「なに言ってるの。私たちふたりで一人!…じゃない?」
その言葉に感激したファインが力強く答えた。
「レイン。なんだかレインとあたしとなら、シンメトリカルドッキングとか二神風雷拳が出来る気がするよ!」
「ふふ。ファインたら。さすがにカサンドラには入らないわよ?」
「じゃあせめて入り口で石像のフリして世紀末救世主を待って…あーっ!もうこんな時間?!早く帰らないと!」
見ると、時計は午後6時を回っていた。あたりが暗くなり始めている。
「急ぎましょ!」
「うん!ほんとに変な人が出たら大変だもんね!」
「いそげ!いそげ!」二人は足を「@@」の形にして、急いで帰途についた。

その様子を、柱の影から鼻持ちならない様子で眺めている少年がいた。もとワルプルギス星の王族にして、今は平民のトーマである。
「・・・ふん。みているがいい。今日がお前たちの最後の日だ・・・。飛騨は合掌造り・・・。」
さすが優等生。駄洒落のセンスがさっぱり分からない。
とりあえずトーマはニヤリと笑って消えた。

一方「@@」で走っているファインとレイン。
「あう・・・。」
「どうしたのファイン!?」
帰り道の途中、「@」になっていたファインの足が止まった。ここは学園から寮に帰るまでの道の中で、唯一街灯が無くなり、夜になると真っ暗になる怖い道だ。目も心なしか潤んでいる。
怖気づいているファインに、元気をつけさせようと、レインはいい事を思いついた。
「ねえ!歌でも歌いながら帰らない?」
「そ、そうだね!じゃあ、テンポいい楽しい学校の歌でも歌いながら帰ろ!」

「1・2・3・ハイ♪♪テストさ〜え、なかったなら〜学校は楽しいと〜こ〜♪」

適当にテンポのいい曲を歌い始めるファイン。だが、ファインが恐怖でいっぱいいっぱいで選んだ歌の歌詞の結末にレインは気付いた。
「ちょっ・・・!ファイン?!その歌は!その歌は危険よテンポいいのは最初だけよ!せめて宿題をゴミ箱に捨てたり、毎日が日曜日とか、ライトに学級崩壊を歌ったおじゃ魔女くらいに・・・!」レインはやめさせようと必死になる。だが、歌をやめると無音の闇の世界が押し寄せてくる為、歌い始めた歌は急には止められないファインであった。
「♪でも英語だけでも〜まじめ〜に、してお〜けばぁ〜、いーまーごろ、私は〜♪かっこいい国際人♪」
「うっ!山場がきちゃった!やめてぇやめるのよファイン!らめえー!」
「♪勉強は〜しないよ〜りも、してお〜いたほ〜うがいいわぁ〜♪
♪ひとつ〜でも、得意なもの、あるはず♪
♪ 勉強は〜しないよ〜りも、してお〜いたほ〜うがいいわぁ〜♪」
「はにほ!?何この、年取るにつれて利息のようにどんどん重くなるテーマは!そしてとどめの一撃があ〜!」
「♪あとにな〜って気付いた〜って、おそいわ♪」歌いおわった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
歌う前よりもなんだか鬱々とした気分になったふたご姫。

トーマが、それをみてつぶやいた。
「いまだ・・・。」トーマは精神を集中させると、手をワニさんパックンの形にして何者かを召喚した。

暗い道の中、一塊になってもぞもぞあるく一つの影がある。震え気味のか細い声が聞こえてきた。
「ねえ・・・なにも出てこないよね?」
「でないでない。」
「あそこの暗いとこ・・・なんか人の顔に見えない・・・?」
「みえないみえない。」
「うしろから、誰か見てるような気がしない・・・?」
「プーモプーモ。」ファインを励ましつつ歩くレイン。
「僕の後ろにも何かいるような気がするでプモ・・・」
「幽霊幽霊。」
プモオオオオオオオ!?!?!
結局ぎゅっとしがみついたファインとプーモを引きずって暗い道の中を行くレインであった。
「ううう、こわいよ〜」

がさっ…木の葉が揺れた。明らかに不自然な動きだ。

「!!!!!!!!!!レインレインレイン!あれあれあれ!」
ガサガサガサ!
ごきゅ!ファインが音のするほうにレインの顔を無理やり曲げた。
「ちょっと〜ファインいたいじゃない〜」
ガサガサガサガサガサガサ!
「あううあううああうああうあうあうあああ」ファインが声にならない声を上げる間にもどんどん何かが近づいてくる。気のせいなどではない。
事態にまだ気付いていないレインはのんびりと音のするほうを見渡した。
「多分あれは滑車つきのピーポ君の置物よ・・・。あれ夜中に見ると怖いから・・・??ホワー!!」
レインも何か動くものに気付いたようだ。人型をしたそれは、レインが闇を見ている間にもどんどん近づき、ついには三日月のおぼろげな光に、その正体が怪しく照らされた。
「これは!」
「闇の騎士!どうしてここに?」

「グオオオオオオ!」
闇の騎士は一声吼えると、手に持ったサーベルの切っ先をファインとレインに向けた。
「そういえばさ、ミルロが言ってなかった!?ノーチェが辱められた犯人って真っ黒だったって・・・。」
「あー!もしかして闇の騎士が連続カツアゲ犯だったって事!?でもなんでカツアゲを?」
「グワアアアア!」
「レイン!理由はさておき!」
「ファイン!このままじゃいけないわ!」
目をあわす二人。
「今こそ変身よ!」だが、エフェクトは一切かからなかった。
「あれ?天使たち・・・寮だよね?」
「お・・・大当たりぃ」
「URY-!」
「きゃああああああああああああああああああ!に、逃げるのよ!」

「ふ。天使とお前たちが離れる機会を狙ってたんだ。今がお前たちを倒し、さらには現金獲得する絶好のアタックチャンス!(by柳生博)だから今回は虫とか小動物じゃなくてちょっと力入れてみました!ゆけ!僕の野望と小遣いを稼ぎ出せ!」

「ガォォォォォォン!」
「こっちよ!」
逃げ惑うふたご姫。闇の騎士は力はあるがスピードが遅いので足を「@」にできる双子の方が機動力は上だ。

「フ・・・そう簡単にいくかな?」

「うわっ!こっちからも出てきたー!」行く手に出てきた闇の騎士は、ゆうに十体はいる。
「どーしよー!?」方向転換する二人。
「あっ!」レインが転んだ。闇の騎士がそちらへと殺到する。
「レイン!」サーベルがレインに向けて振り下ろされた。
「!!」
一閃、剣は虚空を薙いだ・・・間一髪、ファインがレインを助けたのだ。
「大丈夫!?」
「あ、足・・・!ひねっちゃった・・・。」
囲まれる二人。
「た、助けてー!」二人に向けてゆっくりと剣を十体の闇の騎士は振りかぶった。

トーマがほくそ笑む。
「やった!第二部完!来週からトーマの下克上日記がはじまります!みんな見てくれよな!」

その時である。
「お待ちなさい!」
どこからともなく薔薇が飛んできて闇の騎士に突き刺さる。すると空間に溶けるようにして黒い騎士は消えた。闇の騎士に動揺が走る。
「だれ!?」
「ここよ!」上空から声がする。
「あ!レイン!あれ!」ファインが空を指差した。
見るとソフィーが笑みを浮かべながら、黄色い雲のようなものに乗って空を飛んでいる。
「こんばんは。危機一髪だったわ。」
「??ソフィー?ソフィーが薔薇投げて助けてくれたの?えっと、その黄色い雲って何なの?それで飛んでるの?」
「もしかして・・・」レインが何か思い出した。
「お話で見たわ。輪っかつけたお猿さんが棒もって雲に乗ってるのよねー。たしか、金斗雲!金斗雲じゃないあれ?」

「大はずれですわっ!金斗雲じゃありません!薔薇も私が投げたのよ。まったく。」金斗雲から声が聞こえる。と、同時にクルッと裏返りになった。すると、見慣れた顔が見える。
「アルテッサ!」ファインが叫んだ。
「すごーい!ありがとー!」ふたごの賞賛の声が飛ぶ。
「あれ?でも、飛んでいるのはどうやって?」
「ソフィーが飛べるからロープで繋いで運んでもらってたのよ。」
「えええ?」

「なんや、あんたら知らんかったのか?」
木の陰から闇の騎士と闘いながらレモンが出てきた。
「レモン!」
「ゴォォォルディオン!ハァァァァリセン!」黄金のハリセンを闇の騎士にお見舞いするレモン。
「光になれええ!」
闇の騎士は言葉通り、光になって消えた。

ソフィーがアルテッサを降ろしつつ、先ほどの質問に答える。
「実は飛べるんですけど、言いそびれちゃって。何故か使われていないんですこの設定。あと、自分で言うのもなんですけど、歌もうまいのよ。」
「ここで襲われた生徒が多いから、2日ほど前から張ってたのよ!まんまと出てきてくれたわね!」
「ここで会ったが100年目や!覚悟してもらうで!ミナミの鬼は恐ろしゅうおま!」
「レモン、『トイチや!トイチ』が抜けてるわよ。」
「あほ!金貸して戻ってくるような相手か!?どうする愛FULL?」
「そんなことどうだっていいでしょ!」
「そうや!決めるで!」れもんが決めポーズをとった。
「あの・・・レモン、前々から言おうと思っていたけど、その決めポーズかっこ悪いわよ。」
「はうぅっ!!!??!?!」そうソフィーに言われたレモンは感電したミジンコのようにピンピン跳ね、
「ぐうう!痛いツッコミが入ってしもた!私はもう駄目や!」地面に突っ伏した。
「これからって時に!何もせずに倒れてどうすんのよっ!」
「あとはまかせた」レモンは倒れた。
「あら・・・困ったわ、困ったわ。仕方ないから、私が相手になるわ。」あまり困ってない風情でソフィーが飛びながら一歩前へ出ると、
「あ・・・ああん。」耳からヌンチャクをソフィーは出す。
「色っぽい・・・。」この、レインのどこか場違いな発言を合図とするかのように、闇の騎士が襲い掛かる!

「ガアアアア!」
弾丸のような勢いで八方から襲い来る闇の騎士に向かって、ソフィーはふわふわと近寄る。
囲まれるソフィー。押し寄せる闇の騎士で姿が見えなくなる。
「ソフィー!」ふたごが同時に叫ぶ。
「心配ありませんわ」それを見てもアルテッサは自信満々に言い放った。
「でも・・・!」

極楽往生――――!」一瞬白とピンクの謎ちくわが、ぽよっとでかくなったかと思うと、闇の騎士を蹴散らした。
かざぐるま殺法!ちくわ曼荼羅!
「URYYYYYYY!」消えてゆく闇の騎士たち。
南無阿弥陀仏!ですわ!
「うわわわわ!?ヌンチャク全っ然関係ないじゃん!」「ホワー!?」
余りにシュールすぎる光景を目の前に、腰を抜かしたふたご姫であった。

「なんだと!かざぐるまのプリンセスはバケモノか!?くっ!次回をお楽しみに!ふたごパワ〜でGyuぽGyu!」
計画が、あと一歩という所で失敗してしまったトーマは、捨て台詞を独り言で言うと、こっそりとその場を離れていった。

「・・・ありがとう。ソフィー、アルテッサ、レモン。」
「でも何故お三方はこんな事を・・・?」プーモが疑問をぶつける。
「実は私、この学校の番長なの。」
「はい・・・?」
「番長?」
「番長たるもの学園の平和を守るべきですわ。」
「・・・。」いきなり『番長』と、現代に絶滅した言葉を言われ、絶句するふたご姫。
「そうや。いまやソフィーがこの学園の番長や。入学早々この学園の影の番長であるバン・ジョー先生とタイマンでケンカ張って勝ちよったからに。」
「かざぐるまのソフィー、薔薇投げのアルテッサ、黄金ハリセンのレモンと言えば番長世界で知らない人は、いないわ。」
「そうなんだ! 」とりあえずそれはそういうものとファインは割り切った。
「レモン、ハリセンってツッコミ入れる為の物じゃないの?」
「なにゆうてん?金で出来たハリセンなんて、単なる鈍器やないか!」的確なツッコミが入る。
「あの金のハリセンが効かなかったのはこの二人が初めてやった・・・。」よく分からない美しい思い出にうっとりするレモン。
「私たち、とんでもないもの呼び寄せちゃってたんだね。」
「知らないとこでいろいろあるのね〜。」とりあえずそれはそういうものとレインも割り切った。

なんだかんだと歩いているうちに、もうここは学園の寮の前である。
「じゃあ私たちはこれで失礼するわ。ファイン、レイン、学園革命計画頑張るのよ。あなたならできます・・・。世界の全てを変えることが」ソフィーが、てきとーにカッコイイ締めの台詞を言う。
ファインとレインは顔を見合わせると元気よく答えた。
「うん!いいさ!僕が王子様になるってことだろ?」
「それは少女革命や!」レモンがツッコむ。
北のチュチェ革命は・・・?」ソフィーが質問した。
あれどうにかならないかしら…」アルテッサが呆れ顔で答える。

アハハハ・・・夜空に乾いた笑いが広がり、今日も学校星の夜は更けていった。

終わり。

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